ネクラであり、人見知りな私だけど、ふいに襲われた孤独感も手伝って、
歩道で捕まえたおばあさんにやたら饒舌になっていた。

そんな中、おばあさんはこの場を離れたそうな雰囲気を醸し出し始め
たので、私はそれに気付き、解放してあげることにした(エラそう)。

おばあさんもきっと漬物を付けたり、お汁粉を作ったりとか、色々
忙しいのだ。まさか、20代後半の千葉からやってきたやたら饒舌な
怪しいオンナから早く逃れたいと思ったからではないはず。

おばあさんと色々お話して(一方的に話して)大分人間としての尊厳を
取り戻した私は、気を取り直して河口湖に沿って走る歩道を散策することにした。


         CIMG1276

そんなに大きな湖ではないけれど、青というよりは濃紺という表現
がしっくりくるような底の見えない深さを感じさせる。

こんなベンチも発見。

          CIMG1279

「明治 スカット」と書かれたベンチ。
私の記憶の限りだと、この商品が一体何なのか、飲料なのかはたまた
菓子なのかもわからない。
このベンチも大分年季が入っており、レトロ感を感じさせるので、私の生まれる前から存在する商品であり、私の生まれる前から存在するベンチなのだろう。

※調べたところ、「スカット」は明治の清涼飲料で、発売は1970年とのこと。初代CMには当時モデルだった峰竜太が起用されたらしい。
今の彼の持つ「恐妻家」タレントというイメージからは、「スカット」という商品名にふさわしいような「爽やかさ」や「清涼感」が到底想像できないけれど。

そしてこんな看板も。

             CIMG1280

その名も「HEART BREAK HOTEL(ハート ブレイク ホテル)」
素泊まり3000円。

ハートブレイクホテル…。

「これがきっと最後の恋!!」と一つの恋を「真実の恋」と信じ、その青春、そして時には命も懸けたものが、実は儚くも淡い「事故」だったことに気付く。そんな傷心を抱えた若者たちが「ハートブレイクホテル」こぞって集い、薪ストーブを囲みながら、肩を組み、皆で「ジュリアに傷心」を歌い、各々のジュリアに思いを馳せ、むせび泣く。そして互いの傷をなめ合う・・・。そんな光景がありありと浮かんでくる。

私もいつの日かお世話になる日が来るかもしれない。
その前にチェッカーズのレコードを借りて、「ジュリアに傷心」を練習
しておかなくちゃ。
んー…。それよりもまずはジュリアに出会わなければ!

…いや、いかんいかん。ジュリアに出会うということは、こっぴどく振られて、ハートブレイクしてしまうことなので、出来ることならジュリアには出会わずして安穏な日々を送りたい。
ハートブレイクホテルにも決してお世話になどなるものか。

「ジュリアに傷心しない」ことを河口湖のほとりで誓う私。

さて、次は今回の旅のメーンイベント。

「天上山から富士の絶景をのぞむ。」

天上山とは、かの有名な童話「カチカチ山」の舞台となった山。

「カチカチ山」ーいたずらをするタヌキを捕まえたおじいさんが、
家に帰り、おばあさんにタヌキ汁を作るように言う。ところがどっこい、タヌキはおばあさんを騙して殺して、おばあさん汁を作っておじいさんに食べさせてしまう。食べた後に、おじいさんはその汁がおばあさんだったことを知り、絶望。タヌキに対して憤慨する。そこへおじいさん夫婦と仲の良かったうさぎが、タヌキにかたき討ちを企てる…。という話。
うさぎがタヌキの背負った薪に火をつけ、タヌキが大慌てで下った山が「天上山」で、思いっきり飛び込んだ湖が「河口湖」らしい。

それにしてもおばあさん汁って…。
タヌキもタヌキだけど、おじいさんもおじいさんだ。
自分の妻をそうと気づかず食べてしまうなんてうっかりし過ぎである。
それ以前に、我が妻に化けたタヌキを見抜けず、差し出された
「タヌキ汁(おばあさん汁)」を何の疑いもなく口に運んでしまうぐらいだ。
おばあさんの突然の毛深さや、ヘンテコな位置にある耳等に
全く気付かないなんて、うっかり者の極みといえよう。

結局原作では最後にタヌキも殺されてしまうようで、この童話の言わんとする教訓はよくわからないが、私としては
「おじいさん、もっとしっかり!」
というエールを送り、本を閉じたいと思う。

そんな「天上山」へはロープウェイで上ることが出来る。もちろん、登山も可能。
   CIMG1283

あーなんでか縦にならない。
ごめんなさい。

    CIMG1284
ロープウェイ。

これが天上山の展望台から見下ろした河口湖。

    CIMG1287


そして・・・・・



    CIMG1288

これが天上山からのぞむ ザ・Mt.FUJI!!!!

写真だとあまり伝わらないのが本当に残念だけど、
ここから眺める富士山は、今まで色々な写真や映像で見てきた
富士山とは違っていた。

裾野が一望できてしまう。
町や家並みや木々の緑が放射線状に、まるで富士という巨木の
根っこのように富士に向かって伸びている。

いや、逆かもしれない。
富士から、長い長い根を周囲に向けて生らしている感じ。
そしてその根っこに人間を含めた生物が息づいているといったような。

天上山からの富士を一人ボケっと、飽かず眺めていた。
初めてバスの中で対面した一瞬の強烈な鳥肌とは違う、
淡々と、お腹の底から小刻みに込み上げる感動を確かに感じながら
日本一とされる山に魅せられていた。

そうか、私たち日本人は富士山の根っこなのか。

富士山はパワースポットといわれるけれども、
もしかしたら根っこである私たちのパワーが寄り集まった
最終地点が「富士山」なのではないだろうか。

この大きく放射線状に広がる裾野は日本列島全てに
繋がっているのだ。
本州自体がもう富士山とも思えてしまうほどだ。
そうであれば、日本で暮らす私たちは富士の上で生活を
営んでいるわけだ。

この山を日本一と称え、何かと日本の象徴であると評され、
日本人の心の拠り所としていにしえから愛されてきた
あまりに特別なこの山の存在意義が何となく少しわかった気がした。

そしてこの文章は、読んでいる人には全くわけがわからないことは十分過ぎるほどわかっている。
サラーっと斜め読みしてくだされ。えへへ。

そして、私は明日からインドに旅立ちます!
インドに行くと、やたらとハマって何度も行くようになるか、
もう二度と、絶対に行きたくない!と感じるか、
両極端に分かれるみたいだけど、はたして私はどちらの
人間に属することになるのか。
「行くと、人生観や死生観が変わる。それほどまでに
執拗に何かを問い続ける国、インド。」
衛生面やトラブル等とても怖い部分もあるけれど、
行くとなったら思いっきり、インドに体当たりをして、
思いっきり自分にも体当たりしてきたい。

イメージトレーニングのし過ぎで、まだ行ってもいないのに
早くもお腹を下してしまった私。

肉体はもうすでにかの国インド。

行ってきまーす!