実家とは良いモノである。

今の仕事に就いて丸二年以上経ち、今は千葉で一人暮らしをしているが、

二年前までは一度も家を出たことがなかった。

それ故、初めて自分の家族たちと離れて暮らしてみて、家族の存在

のありがたさを日々つくづく実感している。

先日実家のある仙台に帰省した際も、美味しい料理に、美味しい空気

を堪能し、のんびり過ごすことができて、良いリフレッシュとなった。


そんな素敵な時間が過ごせた一方で、

今回小さい頃から住み慣れた我が家で、17年もの間気がつかなかった

ある「モノ」に対して、

大きな衝撃を受け、同時に、考えに考えても答えの見つからない大きな疑問に

苛まれることとなってしまった・・・。

            チャオ1
 



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それは


「チャオ」である。

        BlogPaint

  
お茶でも煎れようと、鼻歌交じりで台所のガスコンロの火を付けようとたところ、

コンロのスイッチの一つである

「チャオ」

の文字に釘付けになってしまった。



「チャオって・・・何?」



この家が建てられて、17年。

17年前から今日まで、「チャオ」は変わらぬ姿で、ずーっと同じ場所に存在していた。

私も、もちろん「チャオ」が私が小学生の頃からずっと、3つあるガスコンロのうちの

一つとして存在していたことを認識してはいた。

知ってはいたが、

「チャオとはいかに」

という疑問を持つどころか、

「チャオ」に関して思案した時間を総計したら、この17年という長い歳月の間であっても、

おそらく一分にも満たないのではないか。

いや、もしかしたら皆無であると言えるかもしれない。



「チャオ」はいきなり私の目の前に現れたわけではない。

確かに、確かに、「チャオ」は我が家の台所に新築の時からずっとあったのだ。


それが一体全体どうして、私は17年もの間、「チャオ」の存在に関して何の疑問も抱かなかったのか。

それが何より恥ずべき事である。



「注意力に欠けているなぁ」と仕事をしていても、普段生活していても

自分で感じることが多々あるが、そんな私の欠点を改めて「チャオ」に

思い知らされることになろうとは。


私はすぐさま「チャオって何!?」と家族に聞いて歩いた。

聞いて歩いた結果、誰一人として「チャオ」の正体を明確に答える者は

いなかった。


17年もの間、「チャオ」に何一つ疑問の持たない家族とは、何て注意力

に欠けた家族だろう。

私の注意力のなさは後天的なものではなく、紛れもなく遺伝であることがこれで証明された。


もし、あなたが私と行動を共にしていて「注意力がないなぁ」と迷惑を被る機会に見舞われても

「ま、遺伝だからしょうがないか」と水に流してもらえると幸いである。

「血はあらそえない」とはこういうことだ。



そんな注意力に欠けた家族で「チャオについて」という議題で、緊急家族会議が開かれた。

参加者は、私と、姉とその旦那の3人である。

           チャオ2



まず姉が

「イタリア語の挨拶、チャオじゃない?」

と発言した。

イタリア語の「こんにちは」で、「チャオ」・・・。

あり得ない話ではないが、可能性としてはかなり低いと思われる。


確かに、

「さぁ今日も頑張って料理を作るぞ!」

と台所に足を踏み入れた時に、ガスコンロが陽気に「チャオ!」という挨拶をしてきたら、

そのやる気が2%増しぐらいにはなる効果は見込めるかもしれない。


しかし、その一方で、

「あ~かったるいなぁ、夕飯何にしよう。面倒くさいなぁ。」

という心持ちの時に「チャオ!」と来れば、

「うーん・・・そうね、いっちょやるか!」

というポジティブな気持ちになるか、はたまた

「人が疲れてるのにいきなり「チャオ!」って何よ!あ~も~何か疲れが増したわ~」

と逆にやる気をそいでしまう可能性もあり、コンロ会社にとってもなかなか危険な賭けである。



そもそも、料理人を元気づけることを目的としているならば、

イタリア語である必要がどこにあるのか。

日本語の「こんにちは」。または英語の「ハロー」の方がよほどわかりやすい。

いやいや、元気づけるのであれば、「頑張って!」や「ファイト!」と

くるのが妥当であろう。


そして、もし仮に、ガスコンロの中に、「ファイト!」と書かれたスイッチが一つあったとしたら、

いくら私たちおとぼけ一家でも、一目見て、「・・・ファイト!って・・・」と疑問を抱くのは間違いない。


少なくとも、「チャオ」のように17年間もその存在を放置するようなことはなかっただろう。



これらの理由を踏まえた上で、「イタリア語のあいさつ」説は却下となった。




そうしたところ義兄が、

「炒める」の「チャオ」じゃない?」

と発言した。


お!義兄よ。それはかなりいい線いっているではないか。

義兄は17年我が家に住んでいたわけではないので、

注意力散漫な家族の一員とレッテルを貼られることは、心外であったのだろう。

汚名返上のキラリと光る発言である。

こんな彼だったらもっと早く「チャオ」の正体を暴くことを試みたかもしれない。

義兄がいつもより頼もしく見えた。



確かに、中国語で「炒める」の「炒」はチャオと読む。

したがって、私の大好きなチャーハンは「炒飯(チャオファン)」となり、

焼きそばは「炒麺(チャオミエン)」となる。


「火を使って食材を炒める」という意味の「炒(チャオ)」は、コンロの名前として

ふさわしいと言えるではないか。

大分チャオの真髄に近づいて来た。



・・・ただここでもまだ疑問に残る点はある。


わかった。じゃあ「チャオ」を使って食材を「炒める」としよう。

でも、「煮る」は?「蒸す」は?「揚げる」は?

これらの調理法の場合には「チャオ」は使用してはいけないというのか。


「チャオ」は

「ワタシ チャオ アルヨ。『ムス』 トカ 『ニル』 トカ ソウイウノ ニガテナコトヨ。 アイヤー!」

とでも弁解するつもりだろうか。

        チャオ3





もうダメだ!完全に行き詰まった。こういう時はインターネットで調べるに限る。

インターネットはすごい。

「まさかこんなことを疑問に思う人はいないだろうなぁ」

なんて思うこともそのままズバリ、答えとなるものが載っていたりするから驚きである。

日頃から、このインターナショナルなネットワークには大いに助けられている。



そして見つけた!「ガスコンロの用語集」というホームページに。


以下引用

「チャオ」バーナー

強火バーナーをいいます。語源は炒めるの「炒」を中国語で発音すると「チャオ」になるからです。ガスならではの4.65kw(4000kcal/h) 以上の強い炎が料理の味を引き出します



義兄!!すごい!!まさに彼の言った通りであった。

炒めるの「炒(チャオ)」から「チャオ」は生まれたのだ。



ごめんなさい。「チャオ」・・・。

「えぇ~茹でたり、蒸したりは出来ないのぉ~?」

なんて小悪魔っぽくあなたの実力をみくびったりして。


「シイテイウナラ、イタメルガ トクイ アルガ ユデタリ ムシタリモ 

チャオ ニ オマカセアルヨ」


そう、「チャオ」は優しいのだ。


なんたって、17年もの間、その存在に見向きもしなかったおとぼけ一家の食卓を

文句も言わずずっと支え続けてくれたのだから。


「チャオ」、今までずっとありがとう。

そしてこれからもどうぞよろしくね


これからあなたに会う時には、敬意を込めて「チャオ!」と挨拶しようと思う。

あ・・・でも「ニイハオ!」の方が良いのか。


そうだ。

「ニイハオ!チャオ!」

と声をかければいいさ。



次に「チャオ」に会うのが楽しみなネクラCAであったとさ。


           チャオ4


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